美へのこだわり/個人的『美学』

 中毒性のあるテイスト

音と響の差異/Sound、Tone、Quality of Sound

 コンパクトだが、いい意味で個性的で『中毒性』のあるトーンを持ったシステム。#4343も同様に強い個性と自己主張を持った『中毒性』を有している。

 では、ALTECやElectrovoice、TANNOYはそういった自己主張のない、おとなしい優等生なのか、といえば「とんでもない」という答えの方が多そうだ。

 それぞれに強い個性があるからこそ、根強い信者がいるのではないのか。「当社のシステムはノン・カラーレーションで云々」というセリフは特に海外メーカーの広報担当者が強調する妄想に近い御託宣だ。開き直って、当社のシステムは豊かな個性と、はっきりした主張を持っております、と堂々と言ってみたらどうだろう。

 そもそも、我々が無意識に使っている『サウンド』よいう英語は単に『音』であって、無妙なニュアンスやテイストを含む『響』は『トーン』や『Quality of Sound』と言わねばならないはずだ。そして、そのトーンにおいて、あるいは存在そのものに『危うい』雰囲気をたっぷり持ったリスキーなシステムが……

 こういう雰囲気へのこだわり、執着は個人の美学に根ざす強い思い込みに深淵がある。「美しい」と感じる感性に理屈は存在しない。

 ディープなブルーとシルバーのユニット……    この姿は一目みたらもう忘れられまい。

 人生において極限的な危機に直面し、もはや死を選ぶしかないという孤独の極みで、最後に聴く一曲のために最もふさわしいスピーカー、そんな張り詰めた雰囲気を湛えている。

 大都会の夜景の美しい高層階の一室で、一瞬にして巨額の損失を出して再起不能となった天才トレーダーとか……    大変な思いをされている方は昨今の激変する世界においては珍しくないケースだろう。

 人生の深淵に降りていくような『トーン』と気配に包まれたリスキーな存在……

 危うさの誘惑に負けそうになる──気を確かに持たねば。いや、こんな話を設計者にしたとしても目が点になるか、一笑に付されて終わりになりそうだ。

 むしろ「このシステムは、徹底したノンカラーレーションで……」と、淡々と語り始める可能性の方が高い。

 

コメント