36歳のカラヤン

 ブルックナー8番、1944年の初 STEREO 録音


 なんと、36歳のカラヤン。終楽章のみ、カラヤン初のステレオ録音。1944の録音とは思えないS/Nのいい自然で美しい響き。レコーディングの質にこだわるカラヤンならではか。
ベルリン国立歌劇場附属オーケストラとの貴重な録音でもある。最晩年の演奏のような枯れた激しさはなく、むしろ抑制の効いた、若さゆえの、自己を見つめる眼差しの初々しさのようなものを感じさせる。


 ラストレコーディングから2番目、81歳のカラヤン。36歳からの45年なんてあっという間だ。人間の肉体は老いる。だが、精神は深化し思索する力は強靭になっていく。それにしても、この余計なものを削ぎ落とした、クイックで瞬発力のある、まったくモタモタしたところのない演奏はいつ聴いてもすごいと思う。深く静かに、闇に染み込んでいくかと思いきや、輝かしく炸裂する管楽器、弦──豪華絢爛の演出は皆無で怒涛の推進力を今に繋ぎ止めようとする強烈なグリップが効いている。

 1989年のライブレコーディング、ウィーンフィルは、カラヤンの最終章を最高のフィニッシュにしようとする強い意志に突き動かされている。 



 自分の気持としては、オーディオ・マニアではない。ただ、音楽を自然な響きで再生したいと思っているだけなのだ。しいて言えば『音楽自然再生マニア』といったところだろう。スピーカーにはこだわるけれど、CDプレーヤーやアンプはエントリーモデルでいいと思うようになった。が、サウンド・コントロールのための機器には妥協しない、というポリシー。


 こんなシステムを使っていながらオーディオ・マニアじゃない、と宣言しても信じてもらえないかもしれない。が、ここはカルト的オーディオマニアの修羅場ではない。






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