変革の時−③

 目の前で壁が崩れ落ちる


 空が、なんだか凄いね今日は……    キッチンにいた細君が、カーテンの隙間から外を見るや、巨大なライトグレイの望遠レンズ付きの重たいカメラを掴んでベランダに消えた。

 過酷で陰惨な現実に囲まれ、心身の疲労が限界に達し自身の免疫系の崩壊と鬱状態への墜落を体験した。何が起こったのか、なぜそうなったのか、結果と原因はわかっている以上、治療はできる。自分以上に、大変なことになっている十代の少女たちが入院している。アレの副反応が疑わしい子たちだ。病院をたらいまわしにされ、心療内科に行きなさいと見放され、わたしの元に漂着した。仕事を終えて帰宅すると、ボロ雑巾のようになっている。かろうじて夕食をとりグラス1杯のビールなりワインなりで酔って睡魔に襲われる。何もかもが面倒になって椅子に座ったまま寝てしまう。細君に起こされても、気絶状態だ。

  その夜は、帰宅すると……


 好物のシャンパーニュとブリアサバランが。垂れ込めていた疲労の深い霧がふっと晴れたような爽快感が戻ってくる。

 腐り切っていた五感を覚醒させる至福の記憶。一片のチーズと泡がもたらすこの劇的なドラマはなんだろう。過去数百年、人類が堪能してきたささやかな幸せなるひととき。



  スピーカーは『高さ』と『振動板面積』の相乗効果、elysia+SPL のコントロールで音楽鑑賞用として『打ち止め』的存在となった。頭で考えたあれこれがうまくいってのラッキーだったと思う。4343もあるしもう、何もいらんわ、という気分。それより、何かこれまでしてこなかったことをしてみたい。

 今日は日曜日だが、12:00から当直だ。次の休みは水曜日の午後からの半日。昨日、入院してきた独日ハーフの16歳の超美少女。微熱が続いており、労作時の息苦しさを訴えていた。明らかな副腎皮質機能低下症が負荷試験で確認されていたが他に膠原病を示唆するマーカーの上昇はない。微かに血管炎が認められる程度だ。症状から、高安動脈炎、肺高血圧症を疑い琉球大学病院に紹介することにしたいと思っている。アレは接種していないので副作用ではないだろう。それにしても、複雑でややこしい免疫系がらみの疾患が明らかに増えている印象だ。こちらも、常に『お勉強』していないとついていけない感じで自分の時間がさらに目減りする。まあ、仕事なので当然なのではあるけれど……





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