ARMIN VAN BUUREN / JBL4343

  現代の交響曲



 何度聴いても、これは最新の交響曲だと思えるのだ。全106曲がアーミンによってノンストップで一つの壮大なドラマとして編集されている。アフター・コロナの再生を意識した劇的構成となっており、胸苦しくなって涙腺が緩むのは必至。

 ライン録音(ヴォーカルを除き、原則マイク不使用で、音源のシンセサイザー直結)の鮮度の高い、強烈なエネルギーを4343は物量投入型の今時ではもう有り得ないようなユニット構成で、空間に放射してくる。もう2度と作れないユニットをたっぷり4種、てんこ盛り。


 こんなユニットを搭載したシステムはもう作れないというのは、採算が取れないからだ。ペアで軽く1000万をこえる設定にしない限り、もう無理だろう。こんな製品がかつてはある程度量産されていたという奇跡的な事実があったことを、今となってはため息まじりに振り返るしかない。
 今時のハイエンドスピーカーの、寂しいユニット構成を目の当たりにして、オーディオの暗い未来に絶望する。一番コストのかかるスピーカー・ユニットが手抜きのチープなモデルと置換されていく。そこを技術力でどこまでカバーできるというのだろうか。
 いや、問題はもう少し別のところにあるのかも知れない。たかだか数十年の人生の、最も感受性の高い時代の、まさに同時代を駆け抜けたJBL4343への恋慕の情がこんなことを言わしめるのであろう。情緒の更新・拡張には限界がある。というわけで、今時のハイエンドスピーカー、欲しいと思えるものは皆無ということになる。



 この、ヴィンテージ・スピーカーと言われてしまう4343が、最新のTRANCE MUSICを精神の最深部にタッチする求心力で堂々と再生するところは、やはりユニット力なのか、と思わざるを得ない。そう、ユニットに投入された物量とエンジニアの熱い思いが……






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