JBL 077

 #2405の民生用


 これまでのオーディオ人生において、JBL#2405との付き合いは28歳〜50歳の長きに渡った。誰が何と言おうと、わたしには#2405しかなかった。これしかない、だからこそTannoyフリークの親友にも勧めた。わたしのオーディオが前のめりに進んでいく過程で、色々なタイプのスピーカーシステムへとなだれ込んでいき、その後15年という長期にわたり、#2405を使う機会はなかった。しかし、けっしてこのユニットを否定しているわけではない。誤解してほしくない。

 #2405はわたしにとって、理想の初恋の女性のようであってほとんど『神』レベルの存在なのだ。さんざん語ってきたことなので、今更、という思いもあって触れずにきた。

 わたしの手元に#2405が不在であることで長年のありがたい読者の方々にあらぬ誤解を持っていただきたくない、ということで、ずっと世界中のマーケットで『極上』の#2405を探していた。出来ればアルニコのユニットを。しかし、さすがに時間が経ちすぎている。もう、無理なんだな……    とあきらめかけていた。

 そんな時に、#2405の民生用ユニットである077の、奇跡的ミントコンディションをキープしていた個体を発見した。

 故・瀬川冬樹先生のエッセイで077の独特のテイストについて語られた記事もあった。わたしの率直な印象として#2405と077の音の差はないと思っている。ただ見た目の差があるだけだ、と。透明なアクリルのホーンがもたらす視覚イメージの差だけにすぎない、と。わたしが、けっして#2405を否定しているわけではないということの表明として、手元に奇跡の077を置くことにした。思えば、075の時から、このユニットはリング型リボン+ホーンという構成であり、リボン型ユニットと、ホーン型ユニットの美点を併せ持っていたのだ、ということを今更ながら再確認しているところである。

 長年にわたる読者の皆様、わたしくしはJBLを捨てたわけではありません。60年前の銘器 Apollo を使い、最新の本物のプロ用システムに挑戦しようとしている。

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