あれ……
期待が大き過ぎたか……
まず録音。当然のことながらECMファンとしてはいつもの定番クォリティを期待していた。が、見事にのっけから挫かれることになってしまった。とにかく、澄み切った透明感が、まったく感じられない。こもってくすんだ音場でピアノや弦が歪っぽく聞こえるところすらあった。次に演奏。この曲は天才ピアニストでなければ、やはり苦しい。指が回っていない、というか、音を省略して弾いているように聞こえてしまう。オーケストラは凡庸。高い精神性を引き出す緊張感がないだらけた演奏だ。
ECMは小編成の音楽では素晴らしい録音を残しているが、さすがにオーケストラの録音はまったく不慣れで大学のクラシック音楽同好会レベル。アイヒャーさんもご高齢で、オーケストラサウンドを正しく管理することが出来なかったようだ。
古楽器オーケストラといえばピノックやホグウッド、コープマンなどを思い浮かべるが、ここでは普通のオーケストラサウンドのようだ。ノンビブラート奏法で全体の響きをごまかさず直球勝負しなければならず、そこでサウンドの透明感、美しい緊張感が勝負ポイントになると言われている。が、残念ながら大学のオーケストラレベルの響きだ。
ピアノはあえてブリュトナーを採用したことの期待を裏切るもので、ピアニシモで響きがかすれ気味になったり、こもって混濁するところが残念であった。
アルゲリッチでさえ録音を残さず、コンサートでも弾かなかったブラームスの1番。作曲した本人も完璧には弾けず、クララ・シューマンの演奏でリベンジしたといういわく付きの超絶技巧を要する難曲である。67歳のシフにとってこの挑戦は明らかに失敗だったと思う。あと15年早かったら……
確かにジャケット写真の印象通りの世界ではあったが、オーケストラ録音で避けられない長い配線の引き回しで、いくつかの地雷を踏んでいるような歪み、混濁を感じた。古いワルター、50〜60年代のカラヤンやベームのディスクでもこんな音は聞いたことがない。期待が大きかっただけに、裏切られた反動が大きく出てしまったようだ。あくまでも個人の感想なのでお許しを。
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