69歳のピアニスト

 この緊張感、圧巻のテクニック


 1953年のモノラル録音。だが、バックハウスとベーム、ウィーンフィルという鉄板の布陣。

 凄い、としか言いようがない。ごまかしの効かない早いテンポでぐいぐい弾きまくる69歳のバックハウス。そりゃね、この人と比べないでよね、と言われてしまいそうだが、わたしにとって特別なこの曲、とにかく生ぬるい演奏を聴いているとムカつくのだ。

 おいおい、もっと集中してやってよね、と。できないなら、自分の家で弾いてなさいよね、と。

 激情を理性でコントロールすることで生まれる深さなのだ。フル加速しつつフルブレーキ、という軋轢、矛盾が生み出す孤高、現代にそれを求めれば、絶頂期のグリモー、ということになる。




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