選択の理由−2

 遍歴の末にポロリと……


 オーディオ的に高性能=好きな音ではない、自分が心の奥底で渇望している音……    実は、なかなかこれに気づけない。素直に、それを認められない。

かつては圧倒的な浸透力こそ最善だった


 ウーレイのモニターシステム+ホーンツイーターの組合せ。これをニアフィールドで聴く。マッキンのパワーガードが時々点滅する状態で聞いたベートーベンの『運命』。音楽が鳴り止んだ後の、圧倒的な静寂。シーンともキーンとも言わないが直前までなっていた圧倒的な浸透力の強い響きが全身を透過していき、聴き手はもう抜け殻状態と化す。

 歪まないことに徹底的に配慮した結果、うるさいと感じさせず強烈な音圧を炸裂させることができるようになる。

弾く、叩く系に圧巻のリアリティを発揮したFOSTEX


 特に、大型のT500AMkⅡ は現在世界最強のアルニコ系ホーンツイーターの一つ。シンバル、ギター、シンセサイザーの連続音……    バンドネオン、ハーモニカ、トランペット、ピアノ、トライアングルを耳の近くで強打したような、そういう他を寄せ付けないぶっちぎりの世界が欲しければこれ。モンスター級のサイズ、重量……




 コンパクトスピーカーと組み合わせたら? もちろん能率差は調節した上で。この時に感じた『あれっ……』という『気づきの萌芽』に執着すべきだった……

大型スピーカーが生み出す広大な音場


 約20年ほど前に親友が撮ってくれたオーダーメイド『折り曲げ後面開放バッフル』に装着したJBL E130と2405。朗々と鳴った。この時は、なんとイコライザーを使わなくても済んでいた。センターにあるのはスーパーウーファー。




 長い間、JBLに執着し、特に高域は2405が作る世界以外は受けつけなかった。最後に使ったのはフルレストアされたオール・アルニコの4333だった。
 状態のいい個体で、恥ずかしながらこの時、初めてオールアルニコのピュアでクールでなまあたたかさ、ゆるみ、たるみのない、張り詰めた響きに触れ、これがJBLなのだ、と実感したものだ。2405でなければでないエッジ感、くっきり感。すっぴん+薄いコスメ感、その技が絶品なのだ、と思った。
 すっぴんに近い anminji と仕事用にメイクした彼女。音でスッピンの美を追求するにはスピーカーシステムの『歪』を極限まで減らさないと。




 ここから、またシアターアレイシステムやALTECのモニターシステムなどへと流れ、Ureiに辿り着き、MAGNEPANでおしまい、となる予定だった。
 MAGNEPANによって耳に刷り込まれた長尺リボンツイーターの独特のサウンドテクスチャー。
 その間、SPL  Passeqと通常のイコライザーが聴かせた『歪』の違い。その圧倒的な『差異』はもういやらしいほどあからさまに『歪』について、常に意識させるようになっていったのだ。
 

 この時、感じたのは箱が小さいことのメリット、ビルトインネットワークがシンプルであることの良さ、しっかりサウンドバランスをとることの大切さだった。

ツイーターの好みもはっきりしてきた


パワー感、浸透力、コントラストの優先順位は落ちた
 優先順位トップは誰にでも分かりやすい、説明的な凄さではなく、化粧なしのすっぴんの美しさ、そしてやはり儚さ、脆さと表裏一体になった蜃気楼感、とでもいうのか……
 リアリティ一点張りではないのだ。確かに、ある種のソースでこのツイーターに繋ぐと、まあ確かに凄いことになる(笑)。
 でも、今はもっと大切なことがあるのだ。クッキリはしているのだが柔らかい。クッキリ澄んでいるのにソフトでクリーミーなテクスチャー……


 それを達成するにはこの組合せ、核になるフルレンジのダイアフラムが決め手になったようだ。アルミベースに手の込んだ加工をしている。




Micro-Arc Oxidation Process
強電界酸化結晶化

Micro-Arc Oxidation Process (MAOP)…コーン表面の光沢を抑えた表面処理の名称です。
この処理は、非常に強い電圧(700v)をかけたアルカリ電解槽の溶液中で、長時間かけて、アルミマグネシュームのコーンの表面を酸化させながら結晶を作成するプロセスです。

このMAOPの詳細はAlpair10MAOPのページでご覧いただけます。
(http://www.fidelitatem-sound.com/a_detail%20Alpair10%20MAOP.html)

この処理を採用する事で写真のようにコーンの表面が柔軟な無数の気泡(多くの穴が開いている)のある結晶体に変化します。この方法はコーン自体を変化させる方法ですので質量増加は、対コア材料質量増加比率が0.4%未満と言うコーティングより軽い処理になっています。

左の写真は表面をマイクロスコープで見たものです。スポンジの表面のように見える小さな結晶体と空気の穴が無数に見えます。この数ヵ月を費やして時間をかけて作ったメタルの山と空気の穴が音を圧倒的にクリアーなものにしています。

この表面を通過するマイクロレゾナンスパターンの発生するコーンでダンプすると言う、パルプ振動板に近いダンピング効果を実現しています。これが 非常に平坦な周波数特性を実現し、静かなドライバーと言われる理由です。




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